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デザイナーの怖い話2 「真夜中のコピー」

よくあることと思うのだが、
会社ごとに、その社内でしか通用しない
符丁や言い回しがあったりする。

これはある符丁の持つ、
忌まわしい過去についてである。

入社して三年経ったある駆け出しのデザイナー。
彼の勤める会社では、コピーを取る事を「ゼロをとる」といっていた。

彼は「何でコピーをゼロって言うんだろう?」と不思議に思いながらも、
確かコピー機はゼロックス社のものだったから、多分そのせいなんだろうと思い、
特に意味を聞かずに仕事を続けていた。

ある夜更け、
その彼が、明日入稿のデータを揃え終わりさあ一息入れようかと思った。
もう午後11時だった。
その時前の机を見ると、40代後半のベテランデザイナーが
同じように休憩しようとしていた。

「Aさんコーヒーでも入れましょうか?」

「おぉ、有り難う頼むよ」

そしてコーヒーを二人で飲みながら、
しばらく他愛のない話をしていたのだが、
ふと彼は「ゼロを取る」のことを思いだしたのだ。


「Aさんなんでウチの会社は、コピーを取る事を「ゼロをとる」っていうんですか?」

「ん?そうか…そうだな。考えてみりゃ変だわな。」

「でしょ…何でですかねえ?知ってます?」

「う~ん聞いた話だがな、昔、入稿前夜に起こった事件からきてるらしい。。。」


「昔の入稿は、今の様に一人でデータチェック…なんて地味なもんじゃなかったさ。」

「チームプレーですか?」

「そういえば格好いいがな。デザイナーに版下屋、アシスタントで大騒ぎだったな。」

「昔はアシスタントがいたんですねえ」

「アシスタントってのは、1~2年生のヒヨコデザイナーが担当するもんだったな。
 ともかく文字の修正は、ここが瀬戸際なんだ。ま、今だってそうだけどな。」


「昔の版下ってどうやって修正するんですか?もう印字されちゃってるんでしょ?」

「版下の修正は、切り貼りなんだ。正しい文字を打ち変えてそれを版下に貼る。
 で、修正した版下のコピー取って色指定原稿にするんだ」

「コピーを取るんですか…」


「そう。この時もデザイナーがアシスタントに『版下のコピーを取れ』と指示をしたんだ」

「うんうん」


「しばらくしてアシスタントが帰ってきた。その時デザイナーは青ざめたそうだ。」

「なんでですか?」


「アシスタントは、キャッチコピーを全部はがしていたんだ。」


「・・・・・・・」


「以来な、『コピーを取る』は『ゼロを取る』になったらしい…」


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